MTBはなぜ廃れたか。

MTBはなぜ廃れたか。

ちょっと前の話、MTB XCの若手のエリート選手と呑んだときにこのように聞かれました。「難波さんが真面目(?)にレースやってた頃って MTBがもの凄く流行ってたんですよね?なんでその流行が廃れちゃったんですか?また、流行ることって考えられるんですか?」

先に謝っておくと、真面目にレースやってたと言う程の速さではないので真面目にやってたとは言いません。26歳の彼の勘違いです。

そんな話はどーでもよくて、何で廃れたか。その時はとっさに言葉が出なかったので、時期で言えば00年の新井で開かれたUCI MTBワールドカップぐらいを境に潮が引くようにマウンテンバイク熱が冷めたねー。業界の7不思議。世界的にはマウンテンバイクは今、もの凄い盛り上がりを見せてて売上高でもロードを超えてる大手ブランドが大半なんで、日本でもそのうち盛り返すかもねー。みたいな話でお茶を濁しました。

なぜ廃れたか。業界の7不思議だし、海外ブランドのマーケティング担当者からはなんでそんなに日本ではマウンテンバイクが売れないのか。という話をしょっちゅう問い詰められる。ちょっと僕なりの考え方を書いてみたい。

80年代後半に日本に本格的に入って来たMTBは、アウトドアブームに乗じてトレンドファッションの乗り物として大流行した後に、96年のアトランタオリンピックでの競技導入が決まるとスポーツとして爆発的に普及した。90年代中盤から後半の自転車雑誌はツールの月以外は殆ど毎月マウンテンバイクとマウンテンバイク選手が表紙で巻頭特集は40ページぶち抜きでマウンテンバイクのインプレ特集や乗り方特集となっていたし、今のクラシックレースぐらいMTBワールドカップがカラー6ページぐらいで各レースがレポートされていた。なんて時代が本当にあった。妄想じゃなくて。

2000年の新井のワールドカップの時は、日本にこんなにマウンテンバイクファンがいるんだっていうぐらいの数の観客が首都圏からの交通の便が良いとは言えない上越の新井リゾートにやってきた。軽く数万人は居たと思う。彼らはどこに行ってしまったのでしょうか?

世界のトップライダーと日本選手の間の壁を己の目の前で見せつけられてMTB熱が鎮火っていうんだったら、宇都宮のジャパンカップを見た観客のロード熱だってとっくの昔に鎮火しているだろう。とはいえ、あの頃を境に文字通り潮が引くように乗る人も、売り上げも減った。

時期をほぼ同じくして、猛烈に廃れた業界がある。スキー、スノーボード、そして若い人の間でのゴルフだ。スキーファンの人はこれを読んだら怒るだろうが、僕も冬はシーズン券を買って滑りに行くほどのスキーファンだという事は先に謝っておきたい。

逆に時代を見ると、この数年っていうのはIT革命の波が本格的に日本にやってきて、国内のITバブルも隆盛を極めた。同時に、大半の人がデータ通信機能付きの携帯を持ち、ブロードバンドを自宅に引き、ノートパソコンを買った時期でもある。仕事でパソコンを使わない人はこの時期に初めてメールアドレスを作ったっよという人も多かっただろう。通信費に毎月諭吉が数枚飛ぶようになり、ノートパソコンの導入には20万円を超える程の投資。

MTBは人々の趣味というか生活からリストラされたんじゃないか、と思う。急激に廃れた他のスポーツとの共通点は、機材にお金が掛かって、遊ぶのにもお金が掛かる&複数人で遊びに行って楽しいスポーツ。という点だ。

フィールドまでの交通費、もちろんクルマも基本的には必要。遊ぶとパーツは壊れるし、タイヤは消耗品。一昔前にゲイリー・フィッシャーが言っていたけど、MTBを一日乗ると大体50ドルぐらい消耗品が必要になるらしい。確かにその通り。

新たに訪れた出費が理由でひとり、またひとりと仲間が減るに連れて、仲間と遊びに行って楽しいスポーツなので、最後に残ったひとりでは楽しめない。と言う事で最終的にグループが消滅するという具合。実際に僕自身も周りの仲間がトレイル(オフロードの山道の事です)に行く事が減ってしまい一緒に行く友達を捜すのに苦労した。という経験がある。ロードと違って平坦なコースを選んでツキイチでという走り方が出来ないので、スキルと足が違い過ぎると一緒に行っても誰かが待つか休憩なしで我慢しないといけない。この辺りはスキーもゴルフも同じですね。

その後、ノートパソコン、デジカメ、プリンター(これらも当時は高かった)のような大型IT投資が一巡りした辺りの 2005年ぐらいから急激に伸びてきたのがマラソン、ロードバイク、登山。

エコ・健康ブームというメディアの追い風もあるが、この3スポーツに掛かる共通項は一旦機材を揃えて始めてしまえばたいしてお金が掛からないということだ。財布にエコ、家計に健康なスポーツと言える。

週末自宅から自走でロードバイクで走りに行くのにはポケットに2千円入れて行けば多すぎるぐらいだし、マラソンはレースに出るにしてもシューズさえあれば電車で行って電車で帰れるしエントリーフィーもハーフなら2千円程。里山トレッキングについては言うまでもないだろう。こういった辺りが、爆発的に人口が増えた理由なんじゃないかと思う。

では大量消費スポーツの象徴(?)たるMTBはもはや日本では流行らないのか?答えはノー。東京近郊のショップオーナーと話していても、彼らが口々に言うのは最近MTBは確実に動きがあるという。

ロードバイクも最近はテクノロジー革新で、安くても十分満足できる走りと乗り味を併せ持ったバイクが多くなってきているが、MTBはその度合いが更に高い。各社試行錯誤してきた29erハードテイルがここのところ完成の域に達して来ていることもあって、SLX級でも十分に楽しめる。というか、MTBはトレイルで限界まで攻めて「あっちゃー」と転けて投げて捨てる遊び方こそが楽しいので、そこで「あっちゃー2万円のXTRのディレーラーがぁぁ」となるよりは、「ま、4千円だからいっか。涙」で許せるSLX級のバイクぐらいの方がトレイルライドには油田持ち以外には向いている。

デュラエースDi2で組んだ100万円のロードバイクを持っている人に、20万円の105のアルミバイクを買えば今まで見たことのないもの凄い世界が見れますよ。とはどんなに大金を貰っても僕には言えないが、20万円でSLX級(ロードで言えば105級)の29erハードテイルを買えば、もの凄い世界が確実に待っています。街乗りも楽しいし。とは胸を張って言える。ショップの店長も同じ感覚を持っているから、このカテゴリのMTBが今動いてるんだと思う。ちなみに言うと、ロードと比べると日本では圧倒的に価格設定が弱気なので割安感もある。

段々、MTBのプロパガンダのようになって来たが、過激なキャッチコピーを付けてここまで読んでもらうのが、実は目的でした。(・ω<) ロードこそ自転車の本筋という意見はありますが、美食でいえばフレンチこそが美食の本流と言い張って、タイ料理を一切口にしないようなもの。ロブションもイイけど、タイ料理にはタイ料理の美味しさがあるよねー。俺、四谷にいいお店知ってるよ。っていうのが人生面白いんじゃないでしょうか?食わず嫌いは、自転車人生でおそらく損してます。一度トレイルで自転車に乗ると、「ああ、こんな世界があったのか。地球は広いよお母さん」。となる筈。ならなかったらすいません。 で、経験者しか知らないことですが豪雪地域を除いて、日本のトレイルは今からがオンシーズン。(夏は草が生え過ぎ、初秋はハチが怖い) まとめですが、巷では、折の景気上昇指向でプチ贅沢が流行っていますが、この冬のボーナスでSLX級の29erを買ってトレイルライドに行くというのは如何でしょう? 乾いた枯葉と土の上をタイヤが転がる感触、転ぶ瞬間に自転車って楽しいかもと思う感覚、山頂で仲間と談笑しながら石の上に座って雲海を観ながら食べるどら焼きの味。どれもが、かけがえのない贅沢な時間だと味わえると思いますよ。いわゆるプライスレス。自転車の値段は関係ないんです。

  

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